精神科医として初めて担当したうつ病患者


精神科の研修医になって1週間目。
その日は助教授の初診日で私は予診を担当していました。

お見えになった患者さんは56歳の女性。


問診票には、「気分が憂うつ、不安、眠れない」

いつから?の質問には「1ヶ月程前から」

予診を取るために個室にお呼びする際も終始うつむき加減。
あまりお話したくないといった雰囲気の方でした。

「今日来院された理由として、1ヶ月前から気分が憂うつ
ということですが…」
と切り出すと、その女性は小声ながらも話し始めました。

「実は先月急に長男を亡くしまして…。
 自殺だったものですから、本当にショックで…」

最初の雰囲気とは予想外に割りとはっきり、淡々と
話されました。

助教授の診察で「反応性うつ病」と診断されました。

うつ病になる原因がはっきりしているものを「反応性うつ病」、
逆に原因、ストレス因が不明のものを「内因性うつ病」
と言います。

抗うつ剤としてトレドミン(ミルナシプラン)25mg,
睡眠薬としてレンドルミン0.25mg,
処方はいたってシンプルでした。

その患者さんは診察時、
「まさか子供が自分より先に死ぬとは考えもしなかった」
と涙を流されましたが、助教授の暖かい診察に大分
落ち着かれたようでした。

しかし、数日後、その方が家族に伴われて救急外来を受診してきました。

夜中に急に
「眠らせてー!眠らせてー!」と
パニック状態になったというのです。

子供を自殺で急に亡くしたショックから、心の中は爆発しそうなほど
疲弊してパニック状態になっており、実は食事も満足に摂れて
おらす、大変な消耗状態にあることがわかりました。

再び助教授の診察で、気持ちの休養、心の整理のためにも家から
離れて入院してはどうかということになり、ご本人もすぐに
承諾されて入院となりました。

そして、入院中の主治医は私となり、指導医の先生と共に治療に
あたることになりました。