うつ病が治った人の最後の診察状況

薬も順調に減らしていって遂には完全に
中止することができた。

これで、「うつ病の治療は終了」としても

よいのですが、私はもう少し気をつけて
います。

先ほどにも述べたように、日常生活を送って
いる中で、どんな出来事がいつ、うつ病を
再発させるか分からないからです。

また、うつ病が治りかけている時は、
意外と無理をして再び症状を悪化させて
しまったりします。

また、うつ病の極期よりも回復期の方が
自殺企図が多いものです。

全く動けない時よりも、多少とも動ける
時の方が突発的な行動を起こしやすい
からです。

幸い、私が担当した患者さんで、回復期に
自殺企図した方はいらっしゃいません。

回復期にこそ、慎重になるように、
無理は禁物と常々お伝えしており、
患者さんもそれを守ってくださってます。

薬を減らす時、薬が中止できる時、患者さん
には、うつ病は再発しやすい病気であること
を説明します。

そして、うつ病になる前の生活ペースの8割
で生きていくことが望ましいとも伝えます。

しかし、日常生活に戻れば、結構、無我夢中
で取り組んでしまうことが多いものです。

それに、生きている限り、日々、様々な出来事
に遭遇して楽しんだり、悩んだりします。

ですから、たとえうつ病が再発しても、また
治療を開始すればいいのだから、と安心感
を与えます。

薬もこれまで飲まれてきたものを最小量、
お渡しして、不安になった時や疲れた時、
いつでも飲めるようにします。

そして、もしまた何かあったり、薬が切れたり
した場合にはいつでも診察に来るようにと
伝えます。

ある自動車教習所の教官で、半年間うつ病の
治療を受けた48歳の男性も、薬が中止になって
から1ヵ月後にいらっしゃいました。

調子はものすごくいいのだけれど、眠れなく
なった場合に、安心のために睡眠薬を持って
おきたい、と言うのです。

「以前のようにバリバリ、というわけではない
けれど、毎日元気に働いています。」
と話されました。

そして、お帰りになる時に、
「また、危ないな、と思ったら来ますね。」
と、すっきりした笑顔で立ち去っていかれました。

それっきり、その男性は診察には現れませんでした。