うつ病の診察状況(診察時)

初診を担当する時、精神科医も気合を入れるものです。
初診で的確に診断し、きちんとした治療の方向性を
立てる必要があるからです。


「うつ病かな?」と思って来院されているんだな、
というのは大抵予診のカルテの主訴(主に困っていること)を
見ればわかるものです。

ここからが大事です。

患者さんが悩んでいる原因を推測します。
家族関係、交友関係、職場の状況、それとも原因不明なのか。
そして身体の病気が「うつ病」を引き起こすこともあるので、
既往歴もチェックします。

この予診からいくつかの診断を見立てます。
うつ病の前なのか、既にうつ病だとしたら症状はどの程度か、
どのうつ病に分類できるのか。

投薬は必要か、だとしたらどの薬がこの患者さんに合いそうか。
投薬以外の治療法は何がいいか、など。

この予診から複数の診断名、治療方針を頭に浮かべて、
最終的に患者さんにお会いして診断名を確定しよう、
ということになるわけです。

慣れてくればここまで5分以内にできるものです。
逆にこれ以上時間をかけると、患者さんを
さらにお待たせしてしまうので注意します。

患者さんを診察室にお呼びしてからが、本当の診察です。
「お待たせいたしました。本日診察を担当します精神科の○○です。」
は決まってどの患者さんにもする挨拶ですが、
それからの話し方は様々です。

「今日は、ご自分でもうつ病じゃないかな、
と思っていらっしゃったのですね。」

「ここに来るまで随分悩まれました?」

「今日やっと仕事休んで病院にいらっしゃることが
できたのですね。」など。

この言葉かけによる患者さんの反応から
さらにいろいろな話し方で診察が展開します。

診察時にはご自由にいろいろと話してくださって結構です。
話すのが億劫でしたら必要以上に無理に話す必要はありません。
プロの精神科医なら話言葉以外からも患者さんの状況は
汲み取れるものです。

さて、診察で最も大事なことは、初診時、
医師が診断を含めて今のあなたの状態
をきちんと説明してくれるかどうかです。
そして今後の治療方針についての計画を示してくれるかどうか。

まず、状態説明の例です。

「今日の診察から結論を出しますとまだうつ病というほどではないですね。
ただ、このままそのような残業続きの仕事をお続けになっていると、
近いうちに必ずうつ病になってしまいます。」

「うつ病です。でもまだまだ初期の軽い段階です。」

「中等度のうつ病です。もしこのまま放っておかれたら、
ますますお辛い状態になっていたと思います。
今日ここに来られて本当によかったですね。」

診断名と現時点での状態説明は、
カルテに記載するとおりに患者さんにも正確に伝えます。

次に治療方針についての説明の例です。

「今は残業をやめて仕事時間をこれ以上増やさないことが大事です。
残業停止が必要な旨伝える診断書を出しますので、
今日すぐに会社に提出なさってください。」

「うつ病のお薬、つまり抗うつ剤はもうしばらく様子を見て、
本当に必要な時に出します。」

「夜あまりお眠りになられてないようなので、
今日は軽い睡眠薬を出します。
この薬は短時間作用型なので翌朝身体に残ることないので
安心してお飲みくださいね。」

「早く楽になるためにも、今日から少しお薬の助けを借りましょう。
今のうつ病の状態とお身体のことを考えると、抗うつ剤の中でも
テトラミドという薬が最適と思われます。
ただ、初めてお飲みになるので、一番少ない量30mgから始めましょう。」

「これから2週間ごとに様子を見させてください。
今からきちんとお薬を飲んで治療を続ければ、
うつ病は6ヶ月後には確実に治ります。
その頃には薬も要らなくなっているでしょう。」

要は、初診時にきちんと自分の状態を把握してくれて、
治療方針やこれから何をすればいいのか説明して
安心感を与えてくれた医師であれば、
信頼してこれから数ヶ月にわたる治療を委ねていいということなのです。