私が「うつ病」に一番最初に接した例

私自身が、うつ病に始めて遭遇したのは今から13年前、
母親がうつ病と診断された時でした。

当時私は医学部2年生でまだ臨床医学の勉強もしておらず、

もちろんうつ病に対する知識も経験も
全くといっていいほどありませんでした。

またその頃は今ほどうつ病に対する情報がなかったため、
非常にとまどったものです。

母は公立中学の英語教師をしていましたが、
うつ病になる前年から学年主任を任されました。

つまり校長、教頭と各担任の先生の間にあたる
まさに中間管理職となって、雑用を一手に引き受け、
仕事が増えていったことが原因です。

元来、生真面目で完ぺき主義な母でしたが、
ちょうど更年期も重なり、自分が想定したほど
仕事がこなせない毎日に焦りを覚え、
次第に仕事に集中できなくなってしまいました。

朝家を出た後、学校に行くのが怖くなり、
公園などで時間をつぶした後、家に戻ってくる、
ということを繰り返すようになりました。

高血圧でかかっていた内科でうつ病を疑われて精神科に紹介され、
そこで正式に「うつ病」と診断されました。

しかし残念ながら、母のうつ病治療は難航してしまいました。

初診を担当してくれた先生は適切な治療をし、
職場にも休職の診断書を出してくれたうえに、
更年期の母の身体の状態を考慮して、
いい薬を調整してくれました。

ところが2ヵ月後、その先生が開業のために故郷に戻ってしまい、
次なる主治医の先生に出された薬がいけなかったのです。

母は停年あと2年を残すところで退職しましたが、
結局この時まで5年間、うつ病は一向に良くならず、
家では必要最小限の家事のみをやり、あとは昼間から寝ていた
状態です。

5年の間、電車に飛び込んでしまいそうだという
希死念慮もひどく2度入院しました。

そのうちに、コップや何かをつかもうとすると
手がふるえてしまう、両脚がガクガクして転びやすくなる、
などのパーキンソン病に似た症状が出てきました。

加えて、激しい口や目の渇き、便秘、物が二重に見えるなど、
明らかに抗うつ剤の副作用とわかる状態も出現してきました。

ちょうどその頃、私も精神科を勉強し始めたので、
母の服用している薬の処方箋を見て愕然としました。

当時の母が服用してた薬は、
スルピリド(ドグマチール)300mg、アモキサン75mg、
トフラニール200mg、パキシル40mg。

そして抗不安薬のソラナックス1.2mg、セルシン10mg。

それに睡眠薬のハルシオン0.25mgとベンザリン5mg、
ロヒプノール2mg、
さらに下剤のプルゼニドが2錠です。

つまり、うつ病の治療を始めて5年の間に抗うつ薬が4種類、
それもほとんど一日最大用量まで、
抗不安薬が2種類、睡眠薬が3種類と増えていたのです。

パーキンソン病みたいな症状は明らかに、
スルピリドの副作用であることがわかりました。

私は母に、早速担当医に、薬を減らすか、
変えてもらうよう、お願いするように言いました。

ところが、担当医は、今はうつ病の症状がひどいため、
薬は減らせない、と話されたそうです。

その代わり、副作用のパーキンソン様症状を改善させるため、
パーロデル2.5mgをさらに追加したというのです。

この医者にかかっていてはいつまでも母のうつ病は治らない、
と確信しました。

いろいろ調べた結果、ようやく自宅から20分ほどの
メンタルクリニックの先生が良いのではと判断し、
今までかかっていた先生には思い切って別の病院にかかりたい旨を話し、、
紹介状を書いてもらいました。

新しい先生には、増えてしまった薬を調整してほしいとお願いし、
私も家族として母の治療経過を見守るようにしました。

2年後には抗うつ薬、睡眠薬ともに1種類に減り、
さらに半年後、見事精神科の薬からは縁が切れたのです。

今ではうつ病もすっかり治って、
趣味の裁縫を通じての仲間と交流しながら
無理のない生活を楽しんでいます。